クレアチンサプリメントは、筋肉のパフォーマンス向上や成長をサポートすることで人気のある運動サプリメントです。
体内のクレアチンの約95%は筋肉に蓄えられ、残りの5%は腎臓、肝臓、そして脳に分布しています。
最近の研究では、クレアチンが筋肉の機能を高めるだけでなく、さまざまな分野で役立つ可能性があることが明らかになっています。
そこで今回は、私がクレアチンサプリメントを摂取し始めた理由と、皆さんにも摂取を検討する価値があると考える理由についてお話ししたいと思います。
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クレアチンとは?
クレアチンは3つの異なるアミノ酸から作られたアミノ酸化合物です。魚介類や赤身の肉などに含まれるほか、体内でも自然に生成されます。体はクレアチンをリン酸クレアチンとして蓄え、筋肉が素早く利用できるエネルギー源として活用しています。
体内に存在するクレアチンの大部分は筋肉の働きにおいて重要な役割を果たしています。一方、最近の研究では、クレアチンは脳の働きにも影響を与えることが分かってきました。特に、記憶力や認知機能の向上に関係している可能性があると考えられています。
人間の脳と体の間には「脳血液関門(Blood-Brain Barrier)」と呼ばれるバリアがあり、脳に入る物質を厳しく選別しています。これは、脳が汚染物質によってダメージを受けるのを防ぐための重要な仕組みです。そのため、クレアチンがこのバリアを通過し、脳の健康にどのような影響を与えるのかは興味深い研究テーマとなっています。
かつて、フォード・モーター・カンパニーの創設者として知られるヘンリー・フォードは「精神は最も強い筋肉である」と言いました。しかし、彼はクレアチンのような運動サプリメントが脳にも影響を及ぼす可能性があるとは想像もしなかったでしょう。
では、クレアチンは脳に良い影響を与えるのでしょうか?それとも、クレアチンサプリメントの摂取には何らかのリスクがあるのでしょうか?脳に対してプラスの影響があるなら、私たちも摂取を検討すべきでしょうか?その点について話していきたいと思います。
クレアチンに関する新しい研究
脳は非常にエネルギーを消費する器官です。正常に機能するためには大量のエネルギーが必要であり、食事を抜くと体がだるくなったり、反応や思考が鈍くなったりすることがあります。
そして、クレアチンは、体にとって効率の良いエネルギー源であり、脳もこれを活用しています。食事からクレアチンを摂取した場合、体内では1日に約1gのクレアチンが自然に生成されます。しかし、私たちの体にとって、約1gはそれほど多い量とは言えません。
一部の研究では、筋肉の成長を促進するために最適なクレアチンの摂取量は1日あたり最大20gとされています。ただし、これはアスリートなど特別な場合であり、私を含め一般の人には、そこまでの量は必要ありません。
クレアチンが脳に与える影響
最新の研究によると、クレアチンは記憶力の向上に役立つことがわかっています。特に、加齢による記憶力や認知機能の低下が気になる人や、ベジタリアン(菜食主義)の人にとっては有益なサプリメントです。ベジタリアンは、肉や魚を日常的に摂取する人に比べてクレアチンの摂取量が少なくなるため、サプリメントで不足分を補う必要があります。
脳内のクレアチン量が減少する要因は、大きくは「急性」と「慢性」に分けられます。次のような状況に当てはまる人は、クレアチンをサプリメントによって補うことで、筋肉量や認知機能を維持する効果が期待できます。
- 脳内のクレアチン量が減少する要因
急性の要因:睡眠不足、激しい運動
慢性の要因:加齢、うつ病、アルツハイマー病、外傷性脳損傷、クレアチン合成酵素の欠乏
なお、クレアチンサプリメントを購入する際には、次の2つのポイントを考慮することが大切です。
- どのタイプのクレアチンが最も効果的か
- 副作用のリスクについて
私自身はクレアチンサプリメントの摂取を行っていますが、それが必ずしもあなたにとって最良の選択とは限りません。満足のいく結果を得るためにも、自分の健康状態やライフスタイルに合った方法を慎重に検討するようにしましょう。
クレアチンサプリメントを摂取する際の注意点
クレアチンサプリメントを摂取する際の注意点として、次のようなものが挙げられます。
腎臓への影響
クレアチンサプリメントとして利用している人にとって、腎臓への影響は長年にわたり議論されてきた重要なテーマの一つといえます。というのも、クレアチンが腎臓に悪影響を及ぼすかどうかについては、いまだに明確な結論が出ていないためです。
この疑問を理解するには、体がクレアチンをどのように処理するのかを知る必要があります。体がタンパク質を消化したり、運動によって筋肉が分解されたりすると、クレアチンはエネルギーを供給し、筋肉の修復や再生に必要なアミノ酸を提供します。この過程で生じる副産物が「クレアチニン」です。クレアチニンは体に不要な老廃物として腎臓でろ過され、尿として排出されます。
一般的に、腎機能の評価には、血液や尿中のクレアチニン濃度を測定する検査がよく行われます。何らかの原因により腎臓が老廃物を適切にろ過できていない場合、クレアチニン濃度が上昇します。そのため、腎疾患の指標としてクレアチニン濃度の測定は有効とされているのです。
一方、クレアチンサプリメントを摂取している場合、体内のクレアチン量が増えるため、必然的にクレアチニンの排出量も増加します。つまり、検査でクレアチニン値が上昇しても、必ずしも腎機能が低下しているとは限りません。
実際、国際スポーツ栄養学会の研究では、健康な成人が5年間にわたり1日30gという大量のクレアチンを摂取しても、腎臓に悪影響はなかったと報告されています。
ただし、これは健康な人に限った話であり、慢性腎臓病や腎不全のような疾患を持っている場合は、クレアチンサプリメントを摂取する前に医師と相談することが重要です。
クレアチンサプリメントを摂取する場合は、「腎機能にリスクを与える可能性のあるものは避ける」「腎機能検査の結果に影響が及ぶ可能性を考慮する」という点に注意が必要といえます。
体重の増加
クレアチンを摂取すると体重が増えることがあります。これは筋肉の増加によるものです。
筋肉は密度が高く、水分を蓄える性質があります。クレアチンの摂取によって筋肉量が増え、体内の水分量が増加することで、一時的に体重が増加すると考えられています。
つまり、健康的な体作りにおいてはポジティブな変化といえるでしょう。
クレアチンの適切な摂取方法と摂取量
次に、クレアチンをどのように、どれくらい摂取すべきかについて考えていきましょう。
クレアチンの摂取方法
摂取方法としておすすめなのは、クレアチンに水分子を結合させたサプリメント「クレアチンモノハドレート」です。クレアチンを単独で摂取した場合に比べて体内への吸収率が高く、運動に効果的とされています。
また、クレアチンモノハイドレート以外にも、以下のようなサプリメントが販売されています。
- クレアチンエチルエステル
- クレアチン塩酸塩(HCL)
- クレアチンマグネシウムキレート
しかし、これらのサプリメントについてはまだ研究段階であり、効果や安全性が十分に確立されていません。その点、クレアチンモノハイドレートは安全性が高く、おすすめのサプリメントといえます。
クレアチンの摂取量
1日あたりに推奨されるクレアチンの摂取量は5gです。
かつては、筋肉の成長を加速させるために最初の数日間は1日20gを摂取する「ローディング期」が推奨されていました。しかし、この方法は消化不良などの副作用を引き起こす可能性があり、長期的に見ても1日5gの摂取と得られる効果に大きな違いはないことが分かっています。
このことからも、クレアチンを摂取する際は、1日5gの継続摂取が最も効果的で無理のない方法といえるでしょう。
注意すべき成分
クレアチンサプリメントを選ぶ際は、含まれている成分を確認することが大切です。
多くの製品にはクレアチンのほかに、炭水化物やビタミンなどの栄養素が含まれています。また、一部のサプリメントにはカフェインなどの覚醒作用のある成分が配合されていることもあります。
これらの成分は、クレアチンの吸収を助けたり、エネルギーの生成をサポートしたりする目的で加えられています。
しかし、筋肉の成長ではなく認知機能の向上を目的としてクレアチンを摂取する場合は、余計な成分が含まれていないか注意する必要があります。
クレアチンの摂取は検討すべきでしょうか?
国際スポーツ栄養学会は、クレアチンモノハイドレートが現在利用できる中で最も効果的なエルゴジェニックサプリメント(アスリートの競技力向上を目的とて摂取されるサプリメント)であると発表しました。クレアチンモノハイドレートには、トレーニング中の筋肉の回復を助け、成長を加速させる効果があることが明らかになっています。
一方、認知機能や記憶力、アルツハイマー病などの疾患への効果については、現在も研究が進められています。実験ではポジティブな結果も得られていますが、実用化に向けてはさらなる研究が必要です。
私は、筋肉の成長と認知機能の向上を目的に、毎日クレアチンを摂取することを決めました。しかし、目指すべき目標は人によって異なるため、私に合う方法が必ずしも皆さんに適しているとは限りません。クレアチンの摂取量や摂取方法については、医師に相談し、自分に合った適切なアドバイスを受けることが大切です。
参考文献
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